【北海道】アイヌの調味料だった、イルカ、シャチ、クジラの脂

2020/06/29

全国のくじら伝統食

アイヌの食生活には、特別な甘味料があるわけではありませんでした。またカエデなどの甘い樹液を煮詰めた、いわゆるメープルシロップはあったのですが、そのまま飲んでしまいますし、長期的な保存ができませんでした。アイヌの人にとって甘みというのは、砂糖や樹液の甘さや花のミツではなく、動物、植物の各種それぞれが持っている特有の甘さをさしています。つまり、同じ「甘い」でもほのかな甘口なのです。
甘みを増そうとしたり、まろやかさを出そうというときの調味料には油脂を使います。油脂は植物から採取することはなく、すべてが動物です。陸上動物では、クマ、エゾジカ、タヌキなど。海生生物では、イルカ、シャチ、クジラ、アザラシ、トド、マンボウ、サメ、ウミガメ、イワシ、ニシン、ストソウダラ。鳥類では、ハクチョウ、シギ。他にも雑魚や雑多な動物を煮たててしぼり汁をつくり、そこに浮いた脂を使用することもありました。
油脂の香りや舌ざわり、そして甘さはそれぞれ異なるので、調理法によっていくつもの味覚を味わうことができました。

出典:『日本の食生活全集』(農文協)